今日のテーマ:きょうだい児の障害受容の過程
みなさんこんにちは。
お子さんに障害があると分かった時、心理的なショックを受けることが言われています。
深イイ話で千葉ロッテマリーンズの美馬学投手とアンナママと天使ちゃんが取り上げられていましたね。
そこで、今日のテーマは、障害のある親の障害受容の過程について、代表的な説について書いてみようと思います。
あくまでも、研究仮説でのものであり、すべての親に当てはまるものではありません。
この記事の目次(contents)
親の障害受容の過程
段階説は、障害のある子どもの親の心の軌跡に焦点を当てているものとのことです。
Drotor(1975)の段階説
障害関係の書籍でよく目にするものの1つに、Drotor(1975)の段階説があります。
これは、先生奇形児を持つ子どもの誕生に対する正常な親の反応の継起を示す仮説的な図です。
この図の特徴
・縦軸が反応の強さ、横軸が時間の経過
・親の反応を5つに分けている
Ⅰ.ショック
Ⅱ.否認
Ⅲ.悲しみと怒り
Ⅳ.適応
Ⅴ.再起
Blacher(1984)の段階説
「Sequential stages of parental adjustment to the birth of a child with hand-icaps: fact or artifact? MentalRetardation」という論文によると、親の障害受容の段階について取りあげている24本の論文をまとめると、段階区分が3つに分けられると言うものです。
3つの段階とは
1.最初の危機反応
2.持続する感情と反応
3.適応と受容
です。
中田(1995)の螺旋形モデル
以下は、中田洋二郎(1995)が提唱した螺旋形モデルです。
この図の特徴
・親の内面を障害を肯定する気持ちと障害を否定する気持ちが常に存在することを示している
・障害の肯定と否定の過程を繰り返すことが示している
・障害の肯定と否定は区切られた段階ではなく連続した過程として捉えている
・最終段階があるのではなく、すべてが適応の過程として捉えられている
杉山(2000)の「キューブラー・ロスの「死の受容」モデルの適応による障害受容
杉山はキューブラー・ロスの「死の受容」モデルを障害に当てはめて、障害の受容について提唱しています。
キューブラー・ロスの「死の受容」とは?
キューブラー・ロスは精神科医であり、終末期医療の研究者です。
彼女は著書On Death and Dying「日本語訳:死の瞬間」(1969)において「死の受容」プロセスの5段階を唱えました。
第1段階:否認と孤立(denial & isolation)
自身の命が危機にあり、余命があと少しである事実に衝撃を受けます。頭で理解しようとしますが、感情的に余命があと少しである事実を否認している段階です。もしかしたら、間違いであるかもしれないという反論をしますが、それは否定できない事実であることは分かっています。周囲は余命がわずかであるという事実に基づいて考えているため、そうした周囲から距離を取り、孤立をすることになります。
第2段階:怒り(anger)
自分自身が死を迎えるという事実は認識ができましたが、「なぜ自分が死を迎えなければならないのか」「自分は何も悪いことをしていない」「悪いことをしている人が死を迎えればよい」などという怒りにとらわれている段階です。
「あなたは死ななくていいね」「あなたは生きられていいね」などと自身の周囲、病院であれば看護師に皮肉のような発言をすることもあるといいます。これらの背景には、「なぜ、私が…」という死に選ばれたことに唖チスル反発があります。
第3段階:取り引き(bargaining)
信仰がなくても、神にすがり、死を遅らせてほしいと願う段階です。自分が死ぬということは理解できたが、もう少しだけ待ってほしいと思います。例えば、自身の財産を寄付したり、これまでの行為を改めるといった「取り引き」をしようとします。死ぬことを何とか回避することができないか模索をします。
第4段階:抑うつ(depression)
「これだけ頼んでも、死ぬという結果は変わらない」「神はいない」というように自分なりに祈りをささげても、死ぬことを回避できないないことを悟る段階です。悲観と絶望に打ちひしがれて、憂鬱な気持ちになります。自分の頭では理解していた死ぬということが、感情的にも理解できるようになります。虚無感にとらわれることもあります。
第5段階:受容(acceptance)
今までの段階では、死ぬことを拒絶し、なんとか回避をしようとしてきましたが、命あるもの、生命が死んでいくことは自然のことであるという気持ちになります。もちろん個人差もありますが、それぞれに生命観などのものを形成し、自分をその一部として位置づけることもあります。自分自身の人生の終わりを、静かに見つめることができるようになり、心に平穏が訪れることになります。
このモデルを障害に置き換えて説明したものが、以下です。
杉山(2000)の「キューブラー・ロスの「死の受容」モデルの適応による障害受容
キューブラー・ロスの「死の受容」の5段階説を障害受容に適応させたものです。
「死」を受け入れがたいものと位置づけ、「死」を障害に置き換えて障害受容をとらえるものです。
杉山登志郎(2000)「発達障害の豊かな世界」より
障害受容の5段階
第1段階:否認・隔離(キューブラー・ロスでは否認と孤立)
自身の子どもが障害であるはずがない。と頑なに認めたくない段階です。障害は間違いですと言ってもらえる医師を探すこともあります。
第2段階:怒り
なぜ自分の子どもが障害を持って生まれたのか、という怒りがわいてくる段階です。周囲の人の関わりが他人事のように、冷たく感じたりします。結婚の経緯にまで遡って怒りが生まれることもあります。わが子にまで、怒りが及ぶこともあります。
第3段階:取引
療育などの訓練に没頭する段階です。障害に良い治療法や指導法があると聞けば、遠方であっても出向いたりします。虐待に近い状態にまで子供を追い込んでしまうほど、追い詰められた精神状態にあります。
第4段階:抑うつ
障害に対する諦めの段階です。さまざまな療法等を試みますが、障害の存在が否定できなくなると抑うつ状態に陥ります。周囲との関わりを避け、熱心だった療育にも関心がなくなってきます。
第5段階:受容
障害受容の段階です。これまでの苦しい過程を経て、障害があろうとなかろうと、かけがえのないわが子であることを了解し、障害を受け入れます。
まとめ
今日は障害のある子をもつ親の障害受容についてリサーチしました。
冒頭にも書きましたが、
あくまでも、研究仮説でのものであり、すべての親に当てはまるものではありません。
親の障害受容には、様々な要因が報告されています。
障害受容に関する要因については、また別の記事で書いてみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。